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乳がんの治療(手術)

乳がんの治療について

乳がんの治療は、手術、放射線といった局所治療、手術前後に行う薬物療法による全身治療を、患者様の状態によって適切に組み合わせて行うことになります。
ここでは主に手術治療について解説しますが、その前にそれぞれの治療に際しての当院の対応をご紹介致します。

手術

当院では、手術が必要な患者様には、当院と連携する医療機関をご紹介致します。もちろん、手術に際してご希望の医療施設がある場合には、紹介状を書かせていただきます。手術後は当院で再発がないかのフォローや内分泌療法(ホルモン療法)を行うことが可能です。

放射線治療

当院では放射線治療は行っておりません。当院と連携する医療機関にて受けていただきます。放射線治療は入院の必要はなく通院で受けることができます。そのため放射線治療が続いている間も当院に通院していただき、フォローを行うことは可能です。

薬物療法

当院では、薬物療法として主に内分泌療法(ホルモン療法)を行っています。内分泌療法を行う際に出現する副作用に対しての相談をすることも可能ですし、一部の内分泌療法の副作用で出現する骨密度低下に対して、骨密度検査をすることも可能です。

乳がんの手術

乳がんの手術には乳房を温存する乳房温存手術と、乳房切除術があります。
乳房温存手術は、がんのできた部分のみを切除する方法で、できるだけ元の乳房の形を残します。一方で乳房切除術は、大胸筋は残し、一部の皮膚と乳腺を切除する手術です。どちらの方法を選ぶかは、MRI検査などで乳がんの広がりを慎重に考慮しながら決定します。適応を守れば、どちらの方法で手術を行っても、その後の生存率に有意な差がみられないことがわかっており、乳房温存手術が全体の6割程度を占めています。
なお、乳房切除術の場合、ご自身の身体の組織や人工の組織などを使って乳房再建術を受けることもできます。乳房再建術はがんの手術と同時に行う方法と、後から再建術だけを行う方法があります。

乳がん手術の方法

乳房温存手術

乳房の形をできるだけ維持しながら、がんが広がっている部分を取り残しが無いように切除を行います。
そのため、手術中に術中迅速病理診断による組織診で断端にがんがいるかどうかを調べることもあります。乳房温存手術の場合、術後には放射線療法が必要となります。

乳房温存手術が
適応にならない場合

  • しこりの大きさが4~5cm以上の場合
  • 2つ以上のがんのしこりが同じ側の乳房の離れた場所にある場合
  • 乳がんによる石灰化が広範囲に広がっている場合
  • 手術の後に放射線療法が行えない場合
  • 美容的な仕上がりがよくないことが予想される場合
  • 患者さんが希望しない場合

乳房切除術

乳房のすべてを切除する手術ですが、がんの状態によって、乳頭や乳輪、乳房の皮膚は温存できる場合もあります。

乳房再建

乳房再建術にはご自身の皮膚や脂肪、筋肉を移植する方法と、シリコンなどの人工物を使う方法があります。

自家組織(じかそしき)を使った乳房再建

患者様ご自身の下腹部や背中、大腿部から皮膚、脂肪組織などを使って失われた乳房の形を再建し、その後希望があれば乳頭と乳輪を再建します。

人工物を使った乳房再建

乳がんを切除した後、皮膚を縫い合わせる際にエキスパンダーという特殊な物質を挿入し、しばらく時間をかけて皮膚を拡張した後、シリコンインプラントを挿入して乳房を再建します。希望があれば乳頭と乳輪も再建します。

時期による
乳房再建の分類

乳房再建術は、乳がんの手術と同時に行う場合と、その後の化学療法などが終わって落ちついてから行う方法があります。詳細な分類を以下の表に示しておきます。

分類 特徴
時期 一次再建 乳がん手術と同時に乳房の再建手術を行います
二次再建 乳がん手術後、数ヵ月以上経過してから乳房再建を行います
手術の回数 一期再建 1回の乳房再建手術で終了します
二期再建 2回に分けて再建手術を実施します
1回目の手術でエキスパンダーという袋を挿入します
その袋によって皮膚が十分に伸びてから、2回目の手術で自家組織や人工物に入れ替えます

乳房再建には、以上のように様々な方法がありますが、中でも乳がんの切除手術と同時にエキスパンダーを挿入して、数か月かけて徐々に皮膚を拡張し、その後シリコンインプラントを挿入する方法が最も選択されることが多い方法になります。
しかし、患者様の状態や切除範囲などによって、どの方法が選択できるかも変わってきますので、乳房再建を希望される方は、担当の医師とよく相談しながらどの方法を選ぶかを決定してください。

センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節とは、乳がんの細胞がリンパ管を通して転移する際に最初にたどり着く腋窩のリンパ節のことで、センチネルは英語のsentinelから来ており、番兵・見張り役を意味しています。
具体的な方法としては、乳輪の皮膚に微量の放射性同位元素や人体に無害な色素を注入し、その物質が乳房からリンパ管を通して最初にたどり着いたリンパ節を確認して切除し、病理検査でがん細胞が含まれないかを確認するもので、このリンパ節にがん細胞が見つからなければ、そこより離れたところへの転移は無いものと考えます。
もしセンチネルリンパ節にがん細胞が見つかった場合は、腋窩のリンパ節を追加で切除する次の段階へと移ります。

腋窩リンパ節郭清
(えきかリンパせつかくせい)

腋窩とは腋の下をあらわす医療用語です。センチネルリンパ節生検を行った結果、がん細胞の転移が認められた場合、そこより離れたところのリンパ節への転移を考慮して、腋窩のリンパ節を切除する手術が腋窩リンパ節郭清です。
この手術は、腕が上がりにくくなったり、しびれやむくみがあらわれたりすることのある侵襲の大きな手術で、現在では、センチネルリンパ節生検が陽性であったとしても、患者様の状態によっては腋窩リンパ節郭清手術を行わないケースもあります。その場合は乳がん切除手術後、腋窩にも放射線療法を行うことになります。
腋窩リンパ節には腋の下の最も転移しやすい部分をレベルIとし、最も腋の下から遠い鎖骨部分をレベルⅢ、その中間にあたる小胸筋の後から大胸筋と小胸筋の間のレベルⅡと3段階があり、転移の状態によってどこまで郭清するかを決定していきます。現在では、レベルⅢまで切除するケースはほとんど無くなっています。